
柳家小さんの落語に、長屋の花見というのがあります。
貧乏長屋の連中が大家の先導で花見に出かけるんですが、
なにせフトコロがさびしい。酒も、酒の肴もままならない。
で、大家が一計を案じて、一升瓶には番茶を詰め、かまぼこ
のかわりに大根を、卵焼きのかわりにタクアンを用意する。
そうしてサクラの下で、珍妙な花見の宴がくりひろげられること
になります。とはいえ、満開のサクラがなによりのご馳走なん
だから、ほかにはなんにもいりませんよねぇ、大家さん。
ことし最初の花見は、熊谷の荒川堤にいきました。(写真:上)
江戸時代からの桜の名所で「日本のさくらの名所100選」にも
選ばれているソメイヨシノです。
土手沿いに約2キロにわたって500本あまりの桜並木が
続いています。ちょっとした"桜源郷"でしょう。

先日ラジオでどこかの大学の先生が、このまま温暖化が進んで
冬が寒くなくなるとサクラの花が咲かなくなるだろう
と物騒なことをいってました。ひとくちにサクラといっても
ヤマザクラ、エドヒガン、オオシマザクラ、ソメイヨシノ・・・
といろいろな種類があるわけで、ずいぶんアバウトな話だなあと
思ったりもしましたが。でも経験的に、開花のまえに、あるいは
開花する頃に寒い日がつづいたりすると、その年の
サクラは花のつきがいいみたいですね。
ことしが、そんな気がします。イソップの北風と太陽は
サクラたちのための童話なのかもしれません。
上の写真は、サイタマ有数の観光地である長瀞の法善寺
しだれザクラです。北風がやんで、いっきに春のお日さまが顔を
だして、心なしかニコニコ笑っているようにみえませんか。



ことしは凄いサクラをみました。秩父・清雲寺のしだれザクラ
です。噂には聞いていましたが、みたのは初めてです。
テレビなどでも報道しますから、ご覧になったかたも多いかも
しれません。樹齢600年というエドヒガン、天然記念物です。
夜桜がいいというので、日没にあわせていったのですが
想像をはるかにこえるミゴトさに
カラダがふるえるほどの感動をおぼえました。
わたしには、それはサクラではなく、ながい歴史を生きぬいて
きた巨大な生きものにみえました。ちょっと不謹慎なたとえ
ですがギーガーのつくるエイリアンのような。
また、みる角度をかえると、葛飾北斎や歌川豊国が黄表紙や
読本でえがいた、怪奇でいながら、異様に美しい
さし絵のようにもみえました。ライトアップされ、
夜空を背景にすっくと立つエドヒガンは、幻想的というには
あまりに生々しい存在感で、花見客を圧倒します。
今週末は、散りぎわのスゴ味をみせてくれるかもしれません。