「映画」カテゴリー
観はじめるとクセになる映画
norichan
(2011年1月23日 15:55)
今年の冬は本当に寒い。だもんで用のない限りは家から出たくないのですが。
「SRサイタマノラッパー」でブレイクした深谷市(埼玉県)出身の入江悠監督のツイッターやらブログやらをフォローしていると、映画だけでなく音楽だったり、本だったり、刺激的な情報がてんこ盛りで入ってきます。いま話題のロックバンド「神聖かまってちゃん」の映画も、SRサイタマノラッパー3の企画と並行して走っていることを知ってビックリしました。で、YouTubeで"かまってちゃん"を観て、二度ビックリ!へぇ~、こんなバンドもいるんだと衝撃を受け、SR3の完成とは別に、映画「神聖かまってちゃん」の公開を心待ちにしている今日この頃です。
「神聖かまってちゃん」については、andymoriやサカナクションや、大好きなThe
Blue Herbなんかとまとめて、別な機会に"オヤジの気分"を総括したいと思います。
で今日は、寒いから、映画の話なんですが・・・(意味不明?)
去年の暮れから、いつになく、映画をよく観ました。深谷シネマで「闇の列車、光の旅」(既述)。
新宿武蔵野館で、ウニー・ルコント監督の「冬の小鳥」。父親から孤児院に捨てられた少女ジニの絶望と再起の物語です。かわいがっていた小鳥が死んでしまい、亡骸を埋めた穴にジニが自分も埋めてしまおうとするシーンは、思わず息をのみました。ジニを演じたキム・セロンちゃんが、ハンパでなく見事でした。必見です!ちなみに、この映画は韓国から養子としてフランスに渡ったウニー・ルコント監督の実体験にもとづいているそうです。
続いて、同じ武蔵野館でドイツの鬼才ミヒャエル・ハネケ監督の「白いリボン」。第62回カンヌ国際映画祭で最高賞「パルムドール」を受賞した作品です。第一次世界大戦前夜のドイツ北部の村で起こる不条理な出来事と、子どもたちへの体罰から人間の心の奥に潜む残虐性を浮き彫りにする、ちょいと陰鬱な映画です。見終わったあと、生煮えのクリームシチューを食べたような、消化不良の不快感と、身震いするような怖さを感じました。その理由は、いまだに闇の奥です。
この2作品を劇場で観てから、DVDでポン・ジュノ監督の「母なる証明」、ハネケ監督の「ピアニスト」を観ました。「母なる証明」は深谷シネマで観ていたので2度目でした。どちらも母と子の葛藤の物語で、母親のわが子を思うゆえの愚かさ、強さ、したたかさを描いた映画です。「母なる証明」を観て、あらためて韓国映画(と一括りにするのは乱暴なのは百も承知で)の面白さにひっくり返って。続けてTSUTAYAに走り、ヤン・イクチュン監督の「息もできない」を観ました。これも凄かった!久しぶりに神経がヒリヒリするような衝撃を受けました。
暴力と憎しみに支配されたヤクザ、借金取り立て屋のサンフンと、強権的な父親や粗暴な弟との間で悩む女子高生ヨニのぎくしゃくした心の通い合いと突然の別れを描いた映画です。強い母親に対し、こちらは弱い父親、ダメ親父による家族崩壊がメインモチーフです。ロッテルダム映画祭をはじめ、多くの国際映画祭で数々の賞を受賞し、高い評価を受けました。急成長する韓国の暗部を知る上でも参考になりました。
「ピアニスト」は、2001年カンヌ国際映画祭で主要3部門を総ナメにした作品です。常軌を逸した母親の束縛や抑圧された制度の中で歪められた、ヒロインの異常な性を描いています。名門ウィーン国立音楽院のピアノ教授として、ショパンやシューベルトの美しい旋律を奏でる一方で、狂った不協和音にまみれていく後半は、なんともやりきれなくなりますが。これも「白いリボン」同様、観終わったあとに、不気味な、後味の悪さをおぼえた映画でした。
それからこれはCATVのムービープラスで、満島ひかりが出ていたので観たのですが、園子温監督の「愛のむきだし」。なんの予備知識もなしに、仕事の途中で手を休め、深夜見始めました。これも神父である父と息子の葛藤が背景にあるのですが、父親との関係をタテ軸にしながら、「盗撮」「懺悔」「レズビアン」「女装」「勃起」「新興宗教」「殺戮」といったモチーフが、ごた混ぜになって展開します。バカバカしいほどの面白さで、237分の長尺でありながら最後まで観てしまい、終わったのが午前3時過ぎ。結局、徹夜で仕事をするハメになってしまいました。
その中で、満島ひかりがコリント人への手紙第一 10章13節「愛」を唱える長台詞のシーンがありまして。沢尻エリカと聖母マリアを足して2で割ったような、いい表情をしていたなぁ。
ほかにも、BSで観たソフィア・ローレン、マストロヤンニの「ひまわり」(ヴィットリオ・デ・シーカ監督作品)もよかったですが、本日はこれまで。
映画「闇の列車、光の旅」を深谷シネマで・・・
norichan
(2010年12月19日 18:31)
久しぶりに深谷シネマに行きました。最近は、「悪人」も「キャタピラー」も近くのシネコンで観ました。タランティーノやコーエン兄弟、ジャームッシュの名を世に知らしめたサンダンス映画祭で、監督賞を受賞したこうした注目作でも、意外にシネコンで上映されることがありません。深谷シネマ支配人の竹石さんの"こだわり"から生まれた埼北オンエアです。ありがたいことです。
※「キャタピラー」は、シネコンで観たあとに深谷シネマでも上映し、若松孝二監督がトークショーで来館することをあとで知りました。若松監督がどんなお話しをするのか興味はありましたが、映画そのものにボクは疑問符だったのでパスしました。「キャタピラー」を反戦映画としてでなく、江戸川乱歩の「芋虫」の視点で、監督が70代になって到達したエロスの世界を語ってくれるのだったら喜んで行きもしたのですが。。。
で、映画「闇の列車、光の旅」ですが、ストーリーを要約すると(「ぴあ」より)
サイラは故郷ホンジュラスを離れ、父親と叔父と共に約束の地=アメリカをめざしていた。不法移民たちでひしめきあう列車の屋根の上で、彼女はカスペルというストリート・ギャングの青年と出会う。彼は列車強盗団の一員だったが、サイラに暴行を加えようとしたボスを殺してしまい、仲間から追われる身に・・・。
映画のカテゴリーとしては、中米の貧困、格差、そこから生じる不法移民の実態、若者たちのストリート・ギャングへの転落といった、社会派ドラマとしての色彩が濃厚です。監督は、日系のキャリー・ジョージ・フクナガ。実にこれが第一回長編監督作品とのことです。グアテマラからメキシコを縦断しアメリカに向かう列車の屋根の上で進行する、一風変わったロードムービーです。貧困にあえぎ、貧困から抜け出そうとする、過酷な移民のエクソダスの現実をリアルに描きながらも、ボクがこの映画で印象に残ったのはストリート・ギャングのカスペルと彼をめぐる二人の女性でした。より厳密に言うと二人の"女優さん"でした。サイラ役のパウリーナ・ガイタン、カスペルの恋人でギャングのボスに襲われ逃げようとして頭を石にぶつけて死んでしまうマルタ役のディアナ・ガルシアです。どちらもメキシコの女優です。
カスペルのどん底の生活の中で、一縷の光明であったマルタとの恋、そして辛い逃避行の中でサイラがカスペルに寄せる淡い恋心、それを繊細に演じる二人の女優さんの存在感が、この映画を社会派ドラマを超えたエンタテイメントにしているような気がしました。
フクナガ監督の次回作は、英ルビー・フィルムとBBCフィルムとの共同製作(予定)の「ジェーン・エア」だそうです。確固たる意思を持った、強く逞しい女性像を、メキシコの女優さんを使って見せてほしいなと思います。
映画「悪人」を観て思ったこと
norichan
(2010年9月23日 13:18)
・あの「フラガール」の李相日(リ・サンイル)監督が、久々に撮った映画です!深津絵里がモントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を取ろうがとるまいが、絶対に観ようと思っていました。「フラガール」ほどのインパクトはありませんでした。が、李相日らしい一秒一瞬をムダにしない緻密な演出と、主人公の内面を映し出すような暗めのカメラワーク、九州の方言まんまの台詞のリアリティ(関東生まれのボクには長崎、佐賀の正確な方言はわかりませんが・・・)が、どこにでもありそうな物語を、どこにでもいそうな人間たちを通して、リアルに語りかけてきました。若いのに、もう巨匠の風格です。「誰が本当の悪人なのか?」と映画の公式ホームページにキャッチコピーがありますが、この映画は現代における「悪」の諸相を、殺人、格差、孤独、家庭崩壊、欺瞞、詐欺、介護問題など、さまざまな面からあぶり出します。では、この時代に「善」とはいったい何なのか・・・?そもそも「善」は、可能なのか?まずは映画を観て、それぞれにお考えください。
ストーリーについては、公式ホームページをご覧ください。
http://www.akunin.jp/index.html
・ボクの場合、映画はわりと監督か俳優さんで観る方なのですが、「悪人」で期待していたのは、「ブタがいた教室」で星先生を演じた妻夫木聡が、髪を金髪に染め、どんな「悪人」を演じるのかということでした。
いい目をしていました。暗く沈んだ、焦点の定まらない、虚ろなまなざし。自分の居場所がない、心を開く相手もいない、孤独な人間の「目」を、彼はみごとに演じていました。この映画では、妻夫木に限らず、深津絵里、満島ひかり、柄本明、樹木希林の「目」が印象に残りました。哀しい目、寂しい目、切ない目、怒りの目、絶望の目、つかの間の幸せ(希望)の目・・・、役者たちの「目」によって物語が進行していくようでした。「フラガール」でも、蒼井優、松雪泰子は、いい目をしていたなぁ。
・殺される満島ひかりの演技が、光っていました。先日、深谷シネマで「川の底からこんにちは」をやっていたのですが、見損なってしまいました。満島ひかりの主人公が、落ち目の"しじみ工場"の跡目を相続して奮闘する物語です。その時は、満島ひかり Who?だったのですが、「悪人」で俄然興味がわいてきてDVDで観てみようと思っています。
・それから映画を観ていて、ふっとthe mad capsule marketsの「公園へあと少し」を思い出しました。祐一(妻夫木)の心情が、madの世界に近いと感じたためでしょう。ちなみに「悪人」の音楽は、久石譲です。
「公園へあと少し」の歌詞の一部を引用します。
♪冬の朝 1人で歩いた 曇り空と霧の中
吐く息がとても白いと 公園へあと少し
緑色に濡れた道を歩いてそこまで
それほどの道じゃないのに長く歩いている
あの娘がくれた夢と そしてその奥まで
友達もここを歩いた こんな冬の朝に
そのままでいいのさ 歩き続けるだけでいい
飛び出そうなんて思うな その先には何も無い
公園へあと少し 公園へあと少し♪
公園に行き着いても、そこにも、その先にも何もないんだけどね。 吉田修一の原作(ベストセラー)は読んでいないのですが、映画を観てからドストエフスキーの「罪と罰」をもう一度読んでみようと思いました。深津絵里がソーニャのイメージなんですよね(笑)。ラスコーリニコフは妻夫木というより、松山ケンイチなんですが。
よさこい映画、「君が踊る、夏」 9/11公開
norichan
(2010年8月31日 01:58)
近年のよさこい人気を見ていて、TVドラマか映画になってもいいのになあと思っていました。8/28・29に原宿表参道でおこなわれた「スーパーよさこい2010」には、70万人を超える来場者があったというし、ボクの地元・埼玉の「坂戸よさこい2010」でも約30万人が来場したそうです。(坂戸市の人口は約10万人)
こうした「よさこい祭り」は、全国でいま200を超える地域で開催されているそうです。
よさこいの魅力をボク的にまとめてみると、
・鳴子の響きが耳に心地よく、踊りとの相性もとてもいい。
・「よさこい節」、「ソーラン節」の由緒ある民謡をベースにしながら、祭り囃子やジャズダンス、サンバ、ボサノバ、ポップスなど、楽曲を自由にアレンジして、自分たちの個性的な踊りとサウンドが創造できる。
・衣装も自由で、退屈な日常を脱ぎ捨ててファッショナブルな"晴れの"コスチュームで、自分を表現できる。
・参加チームの中には、幼稚園児から70代までの踊り手がいるケースも多く、老若男女が一つになって、和気あいあいと楽しめる。
・流し踊りが基本で、沿道からたくさんの声援が寄せられ、見られる快感がある。
・コンテストが行われるケースも多く、賞狙いの動機により、メンバーのスキルアップと年々の進化が期待できる。
・年間を通じて、よさこい祭りの数が増えたため、出場機会(踊るチャンス)も増大している。
阿波踊りは、見るより自分で踊った方が数倍楽しそうな気がしますが、よさこいはショーアップした踊りとファッショナブルな衣装を見るだけでも、華やいだ楽しい気分にしてくれます。池袋の「東京よさこい2010」は、まもなく10/9・10(土・日)に開幕です。
さて、映画「君が踊る、夏」は、全国のよさこいブームをさらに盛り上げてくれるでしょうか・・・。
■「君が踊る、夏」公式サイト http://www.kimi-natsu.com/
■写真は「坂戸よさこい2010」のスナップです。    
埼北・深谷市の真冬の楽しみ
norichan
(2010年1月24日 23:06)
埼玉県深谷市のキャッチフレーズは「花の街」ですが、もちろんこの季節に、町中に咲き誇る花はありません。シネマパラダイス「深谷シネマ」で、幻想の花をめでることにします。フランス映画ココアヴァンシャネルを観にいきました。今月はモーニングショーの「里山」についで2度目の深谷行きです。

伝説のファッション・デザイナー、ココ・シャネルの若き日を描いた映画です。シャネルを演じたオドレイ・トトゥは、キュートで知的な、ショートカットの髪型が似合う女優さんで、アンナ・カリーナほど美人ではありませんがボクの好み。 この映画で、シャネルが姉と孤児院で育ち、歌手・女優になることを夢見ながら地方のキャバレーで生計を立てていたことを初めて知りました。
帽子のデザインからスタートして、デザイナーとしての才能を開花していく過程が、オドレイ・トトゥのシーン、シーンでまとう衣装の変化や表情の変化を通して、自然に映像から伝わってきます。饒舌ではなく、寡黙に。いかにもおしゃれなフランス映画といった印象でした。シャネル・スーツのシンプルでエレガントな美しさは、男のボクにもよーくわかりました。それからやはり偉大な天才というのは、時代に反逆して生まれるものだということを、若きシャネルを取り巻く社交界の女性ファッションと引き比べて、あらためて思いました。

深谷シネマでシャネルのお勉強をしてから、深谷花園温泉の「花湯の森」へ行きました。ここは初めてでしたが、地下2000mから湧き出した天然の露天風呂をはじめ、壺湯や寝湯、檜風呂といったさまざまな温泉があり、麺処で深谷名物の「煮ぼうとう」も賞味でき大満足でした。
おしゃれなシネマに天然温泉、そして郷土料理に舌鼓み。しめて3000円ちょいの深谷の真冬のゼイタクでした。
★「花湯の森」ホームページ http://spa.hanayunomori.jp/
映画「人生に乾杯」
norichan
(2009年12月15日 15:47)
映画という体験の続きです。ドキュメンタリー映画「精神」を観たときに、予告編でハンガリー映画の「人生に乾杯」をやりました。年金生活でやっていけない老夫婦が、ピストル片手に強盗をするという物語です。テーマとしてはありそうな話(?)で新味はないのですが、ふだんはあまり観る機会がないハンガリー映画であることと、若いころに観て共感した一連のアメリカン・ニューシネマ「俺たちに明日はない」とか「狼たちの午後」を思い出したりもして、先週土曜日の最終回を観にいきました。
監督はガーボル・ロホニという人で、長編第一作目、本国ハンガリーで大ヒットした映画です。年金生活者の困窮と、せっぱ詰まってはたらく強盗とその逃避行が、シリアスでなくむしろ軽やかなタッチで、ときにユーモアたっぷりに描かれていく、奇妙な味わいの映画です。ただ最後の最後に出てくるワンカットを見逃すと、大変なことになって、映画の主題を取り損ねることにもなりますので要注意。その前の伏線となる号泣シーンで涙でメガネが曇っていたり、うつむいてお菓子の袋を探っていたりすると、終わってから「自分は映画を観る資格がないんじゃないか」というくらい落ち込んでしまうこと請け合いです。
かくいうわたしが、そうでした。「この映画って、アメリカン・ニューシネマの世界だよね」と、エンディングは観なくもわかるみたいな思い入れから、肝心のカットを見過ごしていたのです!(涙で目がかすんでいたのも事実ですが・・・)
二人が銀行を襲うシーンでは、"俺たちに明日はない"のボニーとクライドがオーバーラップし、奥さんが「人生の心残りは一度でいいから海を見たかったこと」というセリフに、"真夜中のカウボーイ"でダスティン・ホフマン演じる"ネズミ"がマイアミ行きの長距離バスの中で死んでいくシーンを思い出したり、強盗を重ねて全国に指名手配された二人がアンチヒーローとして群衆から喝采を浴びるシーンに、"狼たちの午後"のアル・パチーノが重なったり・・・と、かっての映画の記憶が、目の前の映画のレイヤーになってわたしの目をおおっていたようです。
終わってから、一緒に観た友人から「泣いてソンしちゃったね」といわれて、ハッとわれに返った次第。「人生に乾杯」は、また一つ、映画という体験に"ほろ苦い失敗"の記憶を、こころの奥底に残してくれました。

画像CLICK→拡大 詳細は、深谷シネマ http://fukayacinema.jp/
映画という体験
norichan
(2009年12月13日 14:05)
映画館で映画を観るという習慣が、「深谷シネマ」を知ってから、とても日常的なものになりました。DVDをレンタルショップで借りてきて観るのもいいですが、やはり映画は映画館という非日常の闇につつまれて観る方がドキドキもワクワクもします。
そして深谷シネマのいいところは、埼北の地にありながら、さしたる宣伝もされず都心でもなかなか観られないような上質な映画にめぐりあえることです。そうした映画は、ほとんどDVDとしてレンタルショップに並ぶことはありません。
人それぞれに映画の見方というのはいろいろでしょうし、作品ごとに観たい動機や求める楽しみも異なるでしょう。最近わたしの個人的な思いとしては、映画という体験が意外に根深いところで記憶として自分の中に眠っているんだなということを気づかされた点です。自宅の居間で、あるいはPCでDVDを観ても、こうした思いを抱くことはなく、ストーリーを情報として消費しているだけのような気がします。
20代の頃のように映画館で映画を観る習慣を取り戻してから、いろいろな「気づき」が得られるようになりました。もちろん大半は、わたしの個人的な思い入れに過ぎないものかもしれませんが、映画という体験そのものが個人の実人生に重ね合わせて、きわめて個人的なものだと思います。
先日、深谷シネマで「精神」という精神障害者の実像に鋭く迫ったドキュメンタリー映画を観ました。監督は、ニューヨーク在住の映画作家・想田和弘さんです。外来の精神科診療所「こらーる岡山」に集うさまざまな患者たちの姿を、音楽もナレーションも排し、カメラを通して凝視し、つぶさに観察したドキュメンタリー映画です。その寡黙な映像の中に、患者たちの繊細な心の動きや、負った心の傷の深さ、苦しみから必死に抜けだそうとする癒しへの強い希望と意志が、たんたんと綴られていきます。
年間の自殺者が3万人を超え続ける"異常な国ニッポン"にあって、とりわけ格差やニート、ワーキング・プアといった暗澹たる時代閉塞の状況の中で、「生きるとはなにか」「正気と狂気に境はあるのか」といった根源的な問いかけを、ずしりと重くわたしの中に残しました。
併せて診療所の医師や看護師の現場を通して、小泉政権のもと、「障害者自立支援法」の名のもとに、「自己責任」「受益者負担」のかけ声で切り捨てられていった、福祉政策や社会構造の歪みも静かに告発されます。「精神」という精神科診療所にカメラを持ち込んだ類いまれなドキュメンタリー映画を観て、わたしは繊細であるがゆえに心を傷つけてしまった患者さんたちの背後に、壊れていく文明社会や政治権力の暴走と狂気を見た気がしました。
そして帰りに国道17号線を走りながら唐突に記憶の闇の中から浮かんできたのは、20代に心を熱くして観た、ジャン・リュック・ゴダールの初期の作品「勝手にしやがれ」「軽蔑」「アルファヴィル」でした。ドキュメンタリー映画「精神」から、なぜゴダールなのか、それはわたしにもわかりません。

画像CLICK→拡大 詳細は、深谷シネマ http://fukayacinema.jp/
カムイ外伝とハゲタカと
norichan
(2009年10月 1日 22:03)
衣がえの季節だが、関東では日中の気温の乱高下が続いていて、どんなカッコで外出するか悩ましい日々だ。政治もガラッと衣がえしたが、新閣僚たちの百家争鳴と、なにやら表にでない迷走もかいま見えて、視界不良のダッチロールになどならなければいいのだが・・・。
こんな気分のときにはスカッとした映画を観るに限るというわけで、近所のシネコンで「カムイ外伝」を、大好きな深谷シネマで「ハゲタカ」を観た。崔洋一監督は若い頃にきっと「カムイ伝」を読んでいただろうし、最近では「血と骨」で凄まじい人間ドラマを見せてくれたのでワクワクしながら劇場に足を運んだ。才気あふれるクドカンが、脚本(崔洋一共同脚本)というのも興味があった。結論から言うと、ワクワクは的中!とくに、松山ケンイチの「カムイ」がよかった。松山ケンイチは名前しか知らない俳優だった(「アカルイミライ」に出ていたそうだが印象は薄い)が、白土三平の造形した「カムイ」を、野生と孤独の翳りをにじませながら見事に演じていた気がする。拍手!
平日午後の上映は、観客の入りもまばらで、団塊世代のカップルと団塊ジュニア世代が大半だった。団塊ジュニア世代は多分、白土三平の「カムイ伝」の熱心な読者ではないだろうから、松山ケンイチか小雪さんのファンなのだろう。あるいは、失われた10年で「蟹工船」ブームに火がついた時のように"世の不条理"への思いに駆られ、心が動いてのことだろうか(てなこと、ないか)。いずれにせよ、わたし的には、松山ケンイチの「カムイ」をまた観てみたい。続編を大いに期待している。
「ハゲタカ」はNHKドラマ(全6話)の映画化だ。わりと好きな俳優の大森南朋が主演しているのと、グローバルな投資ファンドの暗躍をスリリングに描いているので、これも期待をしながら深谷シネマの最終回上映を観た。しかし映画はTVに比べると雑なつくりで、TVを観ていないとわからないような人物描写やストーリーが随所にみられ、内容的にイマイチだった。観る側にもリーマンショックを境にして、投資ファンドやTOBといったことに対する疑念やアンチがあるので、ストーリー底割れのしらけた気分が否めない。(ちなみに、TVドラマは2007年2月~3月放送)
大森南朋はTV同様、鷲津政彦をクールに演じていたが、昨年来の現実に起こった悲劇というより喜劇のような金融崩壊の方が、はるかに映画を凌駕していて、南朋さんには気の毒だった。
グラン・トリノ
norichan
(2009年8月12日 09:01)
熱帯性低気圧が台風に変わり、気象庁が中国・四国地方に警戒を呼びかけている夜、深谷シネマでグラン・トリノを観た。50席ほどのミニシアターの、雨降る夜の最終回の上映は、観客もまばらで、ホームシアターのくつろぎに満ちていた。
深谷シネマの素晴らしさは、埼北のネギとブロッコリが特産品の街に、全国の映画人も注目する映画文化を根づかせたことだ。ロードショー公開が終わったばかりのグラン・トリノも、一部の映画マニアしか支持しないようなインディーズフィルムも、街のみんなが望めば、ここでは観ることができる。ありがたい市民映画館だ。
で、グラン・トリノだが。わたしが知ったかぶりの映画評などをすると、クリント・イーストウッドに申し訳ない気もするが、あまりに感動し、あまりに衝撃をうけたので、拙文ながら印象をかいつまんで述べてみる。残念なことに、イーストウッドはこの映画を最後に、俳優業を引退し監督業に専念するのだそうだ。
ゆるゆると、愛妻の葬式シーンから、物語は始まる。主人公は、フォードの元自動車工で、退役軍人、ヴィンテージカー「グラン・トリノ」をこよなく愛している、ばりばりのコンサバ老人だ。日本車のディーラーをしている息子とは、当然ながらそりが合わず、家族からは邪魔者あつかいされ、隣人や牧師にさえ心をひらこうとしない。出だしの30分は、孤独で意固地な老人の、シニカルなアメリカン・ホームドラマのようにみえる。
そして、アジア系ギャングにそそのかされた隣家のモン族の少年タオが、グラン・トリノを狙い、盗みに入るあたりから物語は大きく動き始める。それをキッカケにして、彼は少しずつ変わり始め、人生最後のミッションに向けて突き進んでいく。このあたりのストーリー展開は、言わぬが花だろう。毛嫌いしていたアジア系移民家族とのあたたかな交流のはじまり、モン族の姉弟によってひらかれていく孤独な心、ギャングによる不条理な暴力、アウト・オブ・ロー(無法)への無力、親子の葛藤、神への祈りと懺悔、そして生と死といったテーマが、静かだが緊張感のある映像によってたんたんと綴られていく。
マカロニ・ウェスタンにはじまって、ダーティハリー、許されざる者、ミリオンダラー・ベイビー、チェンジリングと続いてきたイーストウッド映画の集大成を見るような傑作だ。
エンディングは、グラン・トリノを譲られたモン族の少年タオの心を映しだすように(そして、それは主人公の心象風景でもあるのだが)、おだやかな光につつまれた美しい風景の中を、ゆったりとクルージングしながら、終わる。ブラボー!! そして、涙。
サイタマノラッパー韓国へ!
norichan
(2009年6月22日 22:48)
6/22(月)の朝日新聞朝刊にうれしいニュースが出ていた。入江監督の「SRサイタマノラッパー」が、韓国・富川で7/16から開かれる富川国際ファンタスティック映画祭に出品が決まったそうだ。
入江監督おめでとう!
200本をこえる上映作品のうち、日本映画は「SRサイタマノラッパー」のほか「少年メリケンサック」「余命1ヵ月の花嫁」「MW-ムウ-」「フィッシュストーリー」など26本。ことしの「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」でグランプリを獲得した「SRサイタマノラッパー」が韓国でどんな評価を受けるか、今から楽しみだ。
■「SRサイタマノラッパー」公式サイトhttp://www.sr-movie.com/
春から全国各地でさみだれ公開が続く「SRサイタマノラッパー」だが、6/20(土)から6/26(金)まで渋谷ユーロスペースでリバイバル上映中だ。連日21:05からのレイトショーで、日替わりでトークショーも楽しめる。初日のゲストは三留まゆみさん(ライター/イラストレーター)で大入りの大盛況だったという。また大阪でも、シネヌーヴォXで6/20から6/26まで劇場公開している。
http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=206
さらに楽しみなのは、入江監督のふるさと埼玉県深谷市の「深谷シネマ」でも、アンコール上映が決まったことだ。"深谷七夕祭り"に便乗した<入江祭り>の特別企画で7/11から7/18まで開催される。
しかも今回は「ラッパー」だけでなく、なんと入江監督の初期の傑作選「入江悠監督短編集」(計5本・90分)も上映される!DVDも出ていないので、入江ファンならずとも絶対にこの機会は見逃せない。
もちろん、わたしも駆けつけます!
■詳しくは、深谷シネマのホームページで
http://fukayacinema.jp/
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